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2012年5月30日水曜日

映画 アレン・スチュアート・コニグズバーグAllen Stewart Konigsberg







ウディ・アレンことアレン・スチュアート・コニグスバーグの映画を何本観ただろう・・・・

たぶん私がウディの映画を好んで観るようになったのにはある理由がある。

渋谷で働いていた頃、淀川長治さんとこのペイペイの新入社員がお話をする機会があった。先生は映画を観るにあたって自分が好きだと思う監督や作品を作るべきだと言っていた。

当時の渋谷ではコピーライターの糸井重里さんが私のいた流通グループの宣伝を引き受け、次々に世相を反映したキャッチーなコピーを発表していた。

「美味しい生活」「本読む馬鹿が、私好きよ」「遊んでねむれ」なんて最高にかっこよかった。世の中のその時代の一頁を切り取っているそんな自負がペイペイにもあった。

ウディの「美味しい生活」はずっと後に封切られたが、ウディを観ていると、かの淀長さんを思い出す。

ウディは決して幸せな子供時代ではなかったと聞く、母親は女の子に傾倒し、ウディは虐げられていたとも聞く、また、熱心なユダヤ教信者であった両親からウディは強制的に信者にさせられ、彼の宗教嫌いは決定的なものになった。

ウディの映画にはただ単なるペーソスにとどまらない、そうもっと奥深い優しさを感じる。人間愛といってしまえば簡単だか、中年をとうに越したダサい男の人生とでも呼べばよいのか、深い眼差しであろう。

ウディはニューヨークをこよなく愛した。不衛生で混沌としたニューヨークがいつも生きいきと描かれていた。

欧州三部作ははっきりいって駄作だった。彼が本当にリスペクトもしてないものに魂が宿る筈はないのだ。

彼は007のパロディーに出演している。そうカジノロワイヤルである。これは80年代カルチャーを語る上で欠かせないと私は思っている。すごい俳優陣である。私は密かにアマゾンにDVDをオーダーした。

話を戻そう。映画の結末は述べるべきではないが、この映画は少なくとも小説とくにロストジェネレーションの作家やもう少し前のアメリカ文学を好んで読み漁った文学青年や、パリがパリらしかったエコールドパリさらにその前の時代の美術をかじった人にはもう笑うしかない映画である。

決して、俳優がそっくりというのではないが、誰が見ても「ダリね」「ルノワールね」「ピカソね」「フッジィラルド夫妻ね」と思えるキャラクターを与えているのだ。もう笑うしかない・・・

先般の拙宅でのパーティの副題は「Golden Age Party」だった。私は年齢も職業も違う人達が集まるパーティをそれぞれの人が自分のGolden Ageを持ち、しかしながら今こうやって今を楽しんでいるという気持ちを顕したかった訳であるが、この映画の中でも「Golden Age Thiking!!!!!」と何度もこの言葉が登場していた。偶然である。

このところ懐古的な映画が評価されている。「アーティスト」「ヒューゴの不思議な冒険」などどちらも今のCG中心の映画作りを反省し、昔に立ち帰ってみようという気持ちがあちこちに表れているが、へそまがりの私にはノスタルジーと現実はそんなに簡単ではないのではないの??と訝しく敬遠してしまう。

そこへいくと、この映画は良い。ツタンカーメンの時代のエジプト人が「今の若いやつは」と嘆いたという話とおちは同じである。

ウディの映画は小道具にも凝っている。どこで見つけてきたのかと驚くプジョーのサルーン(まさにサルーンにぴったりの車)が夜ごと主人公を憧れの時代に連れて行ってくれる。

さらに映画に登場する実際のシェークスピア&カンパニー書店は戦前のものは姿を消したが、その後のロストジェネレーションの作家に愛されたその姿で登場する。観ていたらポールオースターに合いに出掛けてみたくなった。

話はそれるがこの書店で思い出すのはジェームズジョイスである。「ユリシーズ」はあまりにも有名であるが、かれの「フェネガンズ・ウェイク」は忘れられない。さらにヘミングウェイは「移動祝祭日」の中でなんども同店を登場させている。

そんな映画の筋書きで主人公たちの宿泊するホテルは.ル・ブリストル。ここからモンサンミッシェルに向かうためゴヤールだらけの鞄を車に押し込むシーンなどはっきりいって好きです(笑)

パリが好きな人なら間違いなく最高に楽しめます。ウディのニューオリンズジャズの物悲しい調べにのって、私達が良く歩いたモンマルトルやサンジェルマンデプレ、チュエルリィー公園、改装が終わったオランジェリーなど見どころ一杯。

中々パリには行けないとお嘆きのあなた!!この映画で是非、パリへのショートトリップお薦めします。

妻は傘をすぐさしますが、私はYさんを真似て少しぐらいの雨なら傘を持たないことにしています。(笑)やっぱりパリには妻より私の方が向いているのかもしれません。

そうそう、最後に図書館司書のように美術館のキュレーター宜しく英語が話せるガイド役の人誰だか一目で分かったあなた・・・映画より政治に向いていますよ・・・・笑