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2014年4月2日水曜日

アスパラ

私はアスパラほど明るい野菜を知らない。レタスにしてもキャベツにしてもこのアスパラの明るさの前ではたじろいでしまう。それほどアスパラには明るさがある。春に採れる野菜は多いがアスパラほどそのパワーを蓄えた野菜を知らない。ネーミングもいい。蕗の薹や菜花では寒い日本の冬を耐え忍び、やっと芽吹いた春を感じさせるが、アスパラはそんな苦労とは無縁に突然春を運んでくる。そして唐突に春になる。

昔は八百屋にはアスパラが無かった。初めて食べたのは缶詰のホワイトアスパラだった。ぶよぶよのフニョフニョ、全然美味しくなかった。

当時は外貨獲得のため貴重な輸出品の一つとして栽培されていたようだ。だから生のホワイトアスパラは私たちの口には入らなかったのである。

暫くして、八百屋にグリーンアスパラが並ぶようになった。それでもまだ高価だった。サラダの中に2.3本のアスパラが盛られていればそれは高級なサラダだった。
パリのレストランでひょろひょろと細長いアスパラがフォアグラのステーキの横に添えられていた。察かに私たちが知るアスパラとは違う。ワイルドアスパラガスと言ったが、味の方はマイルドで美味しかった。

日本では北海道で多く栽培されている。春先まず採れるのがグリーンアスパラガスで少し暖かくなってホワイトアスパラガスという順になる。

アスパラは採りたてが一番うまい。時間が経つにつれ、アスパラの清明な香りが消えてしまう。アスパラを食べると頭が冴えるような気がする。気のせいだと思っていたが、アスパラの成分であるアスパラギン酸は脳内物質に反応し、中枢神経を刺激する機序が認められているから私一人のあながち思い込みばかりとも言えまい。

オースチンパワーズというナンセンスコメディの映画がある。主人公は小便小僧の横で頭像と同じカッコをして、敵から逃れるシーンがある。結局、アスパラを食べた主人公のおしっこの匂いで見つかってしまうのだが、ヨーロッパではアスパラを食べるとおしっこが臭くなるというのは広く膾炙されているようだ。

アスパラのことをつれづれ書いていたら玄関先に十勝平野で朝採れたアスパラが送られてきた。早速、梱包を解き、アスパラの匂いを嗅いで見る。切り口から水分が滲み出ている。新鮮な証拠だ。色々な食べ方があるがさっと湯がいて、オリーブオイルを掛けて塩コショウにレモ汁少々で食べるに勝る食べ方はない。