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2013年12月16日月曜日

サケ缶の思ひで

スーパーに並ぶ缶詰の中でも鮭缶は買わない。ツナ缶は買うのだが鮭缶は買わない。中には北海道のどこそこでとれた鮭とブランドをうっている高級品もあるが、別に味がどうのというのじゃないから、私は鮭缶を買わない。鮭缶を買わないのには理由がある。

小学校の頃、サカタくんという近所の友だちがいた。彼の家は私の家のような市から払いさげられた粗末な住宅ではなく、和瓦の立派な家だった。確かご両親は教師をしていたと思う(たぶん)

彼の家の庭には柿の木があり私達はよく登って柿をとったがその柿は渋くて食べられなかった。彼の家には猫がいた。何匹かいた。両親とも共働きで平日の昼間はサカタくんと猫達しかその家にはいなかった。主人のいないその家で一番偉そうにしていたのはサカタくんではなく猫達のほうだった。

サカタくんは猫達に食べ物をあげるといい、台所に立った。猫達は見慣れぬ不審者を暫くじっと凝視し、またフンとそっぽを向いた。

サカタくんが台所から持ってきたのは赤い鮭缶だった。こたつの上に鮭缶を置くと、猫達は集まってきて、その鮭缶を食べ始めた。

しばらくすると猫達は食べることに飽きたのか、こたつから身を翻し、引き戸の隙間から外に出て行ってしまった。するとサカタくんは残った鮭缶に指を入れ、鮭の身をつまんで口に運んだ。唖然として見ている私に「食べる?」と聞いてきた。

それ以来、鮭缶はどうしても買う気になれない。それとも思い切って鮭缶を購入し自らの手で口に運んで「食べる」と息子に聞き返してみようか。鮭缶に妄想が膨らむ。