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2013年3月6日水曜日

勁草と北風


勁草と北風

少年は北風に向かってペダルをこぐ

吹き付ける風は頬を切り裂くほど冷たい

橋の真ん中で自転車は押し戻されそうになる

それでも諦めず少年はぐっと腕に力を入れてペダルをこぐ
川面は海のように水しぶきをあげている

真っ青な空にとんびが一羽流れて行く

自分と周りの物すべてが異質であるような孤独感

そして喪失感

それでも少年は歯を食いしばってペダルをこぐ

思うようにならぬ歯がゆさは若さ故か、それとも運命か

勁草が風に強く押されながら波うっている

制服の内ポケットの一冊の文庫本が少年にとって唯一の盾だ

勁草が強いと知ったのはずっと後だった

少年は前を向いた

少年はさらにもっと強くペダルをこいだ

盾に守られながら全力で






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