贔屓の店
辻静雄氏や山本益博氏について料理や文化についての総合知としての慧眼を持っておられると賞賛したばかりだが、ひとつだけ私と違う点がある。それは贔屓の店についてである。
氏は美味しい物を食べたければ贔屓の客になるべきであると言っておられる。確かにそうかもしれない。それに異論はない。しかし、どうだろうミシュランの形骸と以前申し上げたが、星を獲った店の中には客を客として扱わない店もある。私も経験した事があるし、つい先日、銀座のそんな店に友人が出掛けたら、客の前で板前を叱りつけていたというのである。これでは興醒めである。
こうした店は贔屓の客を特別に扱う。いや、それ自体店が生き残っていくために必要ならば仕方ないだろうが、ならば一般客などとらず会員制で営業すればいい。一般客に門戸を開いておいて、そんな気分にさせる店は良い店だとは思えない。
私などそうした高級店と縁遠い存在なので、私の贔屓の店はそんな事は一度もない。
その親父は常連であろうが、初めての客であろうが、年寄りでも子供でも誰にでも江戸ッ子訛りで満面の笑みをもって話しかけてくる。そして出される牡蠣フライのカリカリでジューシーな事、それはもう笑わずにはいられない美味しさだ。料理に真摯に向き合う事も必要だが、客が楽しく帰る事のできる大らかさも必要な気がする。
私の贔屓の店は、「そこそこ美味しくて」、「肩ひじ張らず」、「客を楽しい気持ちにして帰してくれる店」である。
今日のランチは中目黒の駅裏のあの店にオムライスを食べに行こう。壁に大相撲の取り組み表の張ってあるあの店に
0 件のコメント:
コメントを投稿