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2013年4月11日木曜日

Convivialite


Convivialite

妻の友人が私の一押しの京都のイタリアンレストランに行ったが本人が期待した程ではなかったと言う。彼女が行ったのはランチで決められたコースをチョイスしたようだったのだが。
私が八坂のこの店に行ったのは娘が嫁ぐ前日である。イタリアン好きな彼女だということもあったが、家族で記念になる食事を味わいたいと1カ月前に予約を入れた。

私は辻静雄氏を敬愛する。彼の料理に対する情熱は料理人としてのそれに文化人としての枠閾をなぞって余りあるものだ。その辻氏もさらに彼の後輩でもある山本益博氏もよく使う言葉にコンビバリティというフランス語がある。直訳すれば「皆でテーブルを囲み、楽しい時間を共有する」といった意味だ。
そのために何が必要か?それはその料理とサービスそして時間を繋ぐホストの存在であると山本氏も言っている。子供にメニューを決めさせるような日本では食に対する真摯な対応が難しいし、このホストが不在の場合が多い。ホストに求められるのは単なる知識の詰め込みではなく、料理人やサービスマンへの気配りである。欲を言えば彼らがやる気になるような労いも必要である。

ワインも同様、全てソムリエに任せるのは無難な方法だが、どんな料理とこのワインが合うのか想像する楽しさを捨ててしまっている。
例えば5月下旬の初夏の様な陽気の時には、「今日の様な暑い日に鱸のパイ包み焼きにあわせてさっぱりだが力強いワインが欲しい」と言ってみる。我前、ソムリエのやる気が変わってくる事請け合いである。
難しいことではない。自分の心境を吐露すればいいのだ。

白金台にある三ツ星フレンチに行った時である。料理のレベルはもちろん高く、一切の妥協なき料理はこれならばと、三ツ星を納得するものであったが、その料理を繋ぐソムリエがまた素晴らしい。料理にあわせて次々に出てくるワインはこの料理にしてこのワインの手本のようだった。ふた皿目の貝類にあわせたワインは年代物のブルゴーニュでミネラル分が多くそのワインのテロワールが感じられ目の前にはワイン畑が見えるようだった。そして最後は抜栓したばかりのカリフォルニアのシャルドネだった。デザートと併せてまるで私達をジャッジしてくれとばかりだった。これには降参だった。

もうお分かりだと思うが、素晴らしい店を作るのもまた客なのだと山本氏も言っているがその通りだと思う。その素晴らしさを引き出すのは客なくして出来ない。そして一流の料理店には一流の客がつくものなのだ。料理との出会いは一期一会、そしてその先にいる料理人やソムリエとも一期一会であることを肝に銘じるべきである。私達は美の食の国に生まれたのだから



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