輸入文具の店を始めたのは巴里に行きたかったからである。毎年2回仕入れと称して(本当に仕入れていました・笑)巴里に数日間滞在した。本当はもっと長くアパルトマンでも借りて巴里に住むことが出来ればもっと楽しかったろうに、そんなことは到底出来るはずもなく、数日間の巴里行きで巴里の雰囲気を楽しんだ。
巴里の街をご存知のかたはお分かりだと思うが、巴里は東京と比べるとずっと小さい。
市街地と郊外を隔てるあたりに門がある。実際に門はないのだが、中世の頃には石造りの門があったはずだと思いを馳せる。
その辺りには市が立つ。バンブーもそのあたりにある。クリニャンクールが観光客相手の店が多いのと比べて、こちらは大分庶民的である。店を出している者の中にはフランスの田舎町から車に商売道具一式を積み込んでやってくるものもいる。掘り出し物の古い香水瓶を譲ってもらったこともあった。
巴里で一番好きな場所はモンマルトルの丘の上である。ピガール広場の先だ。あそこから見える巴里の屋根の景色が好きだ。
エッフェル塔には登ったことがないが、あそこでは高すぎる。それに比べると丘から見える景色では、建物には大小の煙突が不揃いに飛び出ていて手に取れそうな感じがする。
丘の下には葡萄畑がある。巴里で作られている唯一のワイン用葡萄だと聞く。葡萄の葉が色づき、西陽に照らされて黄金色に輝く初冬の景色。
早朝かと思いきや時計を見るとすでに8時を回っているのにあたりは暗い。その薄暗い石畳の坂道を大人に連れられて幼い子供たちが登ってくる朝の光景。クロワッサンとカフェオレの香り。
全ての日常が美しい街、巴里。巴里から日本に戻ると、大好きな絵の飾ってある美術館から帰ってきたような気持ちになる。そしてその絵をまた見たくなるのだ。
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