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2011年5月19日木曜日

森於菟 耄碌寸前


あざみ野の行きつけの書店はごく普通のありふれたチェーン店なのですが、時折レジ横のコーナーで面白い企画をしています。

今回はみすず書房フェアです。平積みにされていた本は既読のものがほとんどですが、この人の随筆は読んでいませんでした。著書はもちろん森鴎外の長男であえて文学を志さずに医師になった人です。そんな亡き父を父より10歳以上長生きして俯瞰したこの随筆は親と子、職業と様々な角度で観ることが出来ます。

ぱらぱらとめくると今の人にはないような簡潔で力強い文章です。

ーー本書の中から抜粋ですーー

私は自分でも自分が耄碌しかかっていることがよくわかる。記憶力はとみにおとろえ、人名を忘れるどころか老人の特権とされる叡智ですらもあやしいものである……ただ人生を茫漠たる一場の夢と観じて死にたいのだ」

こういう文章に出会うと巷のアンチエイジングや、老境の心配ばかりしている人をはるかに超えた力強さと爽快感を覚えます。

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