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2013年6月11日火曜日

出藍の誉れ

出藍の誉れ

この店は以前にも登場した。そう、浜田山のたんたん亭出身なのだ。
ガソリンスタンドが少なくなって困るとお嘆きの方も多いと思うが、私もそんな一人である。私の場合は毎日、神奈川と東京を往復するため、多飯食らいのポンコツ車は知らぬ間にガソリンの表示がエンプティを指していてドキッとする事がある。池尻の高速入口に近いガソリンスタンドはとても重宝していた。つまりは過去形である。ご多分にもれず閉店してしまったが、当時はここでガソリンを入れ、時折洗車もしてもらっていた。そんなある日、隣のビルの2階にあるラーメン屋さんに呼ばれるように入っていったのがこの店との邂逅であった。
店は小奇麗に整えられ、一見するとモダンなバーのような作りである。店内はカウンターのみで10名も座れば一杯になる。客は入口の券売機で好きなメニューを選び、店の人にチケットを渡す仕組みになっている。当時は今ほどではなかったが、現在は開店と同時に満席になり、外の階段まで客待ちの列が出来る。
実は今日までこの店で数回食べているが、確実に美味しくなっているのだ。つまり進化しているわけである。店は寡黙な3人の従業員がきびきびと自分の仕事をこなしている。
この店のスープは黒だしと白だしの二つがある。黒は醤油ベースで魚介の味は分からない。白は澄んだ透明のスープで魚介の味が少したつがくどいと言う事はない。はじめスープだけを飲むと少し濃いように思うが麺と一緒に食べるとそれも変わってくる。もっとも黒と白のミックスも頼めるようだが私はまだ頼んだ事は無い。
この店は本家と同様にワンタンも美味しい。巷で供されるワンタン麺の多くは麺と一緒にワンタンを茹でるためワンタンが柔らかくなりすぎている。そこへいくとここは違う。ワンタンと麺を時間差でこなしているからだ。
店内の全てが清潔に保たれ埃一つない。お箸は中細のストレート麺を食べやすいように箸先が工夫されている。器も綺麗に輝いている。
カウンターに座り調理する様子を見ていると、何やらお湯の入ったバットの中にさらに小さなバットを入れ煮卵を温め始めた。以前から暖かいスープや麺に冷たい煮卵が入ることに何となく違和感を持っていたのだが、ここまで丁寧に仕事をする店は初めてだった。
私は黒だしの煮卵入りである。妻は白だし煮卵入りを頼んだ。このところ焼き豚でなく煮豚のチャーシューを供する店が多い。トンコツや濃いスープならそれでも宜しかろうが、清んださっぱりしたスープにとろとろになった煮豚は合わない。しゃきっとした本家本元の赤く縁取られたチャーシューが合う。赤じゃなくてもいいだろうと言う声も聞こえるが断然赤いチャーシューを推す。何故なら、赤いチャーシューはそれを見ただけで私はこういうチャーシューなのと相手に直感的に訴える事が出来る。つまり、チャーシューの出所をあれこれ客が詮索しなくて済むからだ。見た目も大切とはこういう事だと思う。この店のそれはまさにそんなチャーシューだ。
スープを飲み終わって旨みの深さに驚いた。中目黒には塩ラーメンの美味しい店がある。
その店は野菜のエキスを抽出し旨みとして加えているが、魚介が入らないとやはり奥行きが足りなくなる。そこへいくとこの店のスープは完璧に旨みが広がり立体的になっている。
丁寧な仕事をする店に不味い店は無い。この店もそんな店のひとつだと断言する。まさに今、あぶらがのりきったそんな旬な店だ。

出店 池尻大橋「八雲」




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