「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
この頃、方丈記の冒頭のこの一節を特に意識するようになりました。大切な人の死も含めて、去年までの事がずっと昔のことのように思えることがあります。
娘が駅から電話を掛けてきて、妻が迎えに行き、玄関から2階に駆け上がる娘の足音もずっと昔のことのようです。
犬たちも歳を取りました。セプはほとんど動きません。さくらもソファにあがるのがやっとです。
人生というのは本当に不可逆的なのだと強く思います。ああすればよかった、こうすればよかったと思っても同じことは出来ないのです。
今年の夏休みは鎌倉で長逗留していました。しかしながら、一年前とは明らかに違うのです。
どう表現すれば良いのか分かりませんが、同じ景色でも見える色が違うというようなそんな感じです。
そして出会いと別れを繰り返して人は一生を終えるのでしょうね。
夏休みに安井かずみについてのエッセイを読みました。色々な人が彼女について語っています。
はっきり言って、今は読んだことを後悔しています。
あれほど当時まぶしかった人にもこんな事があったのだと知ったとき、知らなければよかったという気持ちになりました。
私は一度だけ彼女を実際に見たことがありました。まるで女王のような豪華さで周りの花よりさらに一際輝いていた事を思い出します。
それから数十年たって私たちも彼女の好きだった、カパルアに行くようになりました。
実は彼女がカパルアに家を持っていたことを知らなかったのです。最初それを知ったとき、「あれっ」という感じでした。そう、彼女の華やかさと、カパルアの何にもないそしてどこまでも落ち着いている景色がマッチしなかったからなのです。
でも今は少し分かる気がします。きっと、彼女も一人の人間だったのでしょう。
次にカパルアに行った時に私の目にはあの南洋松とどこまでも深い青がどんな気持ちにしてくれるのでしょう。
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