日本にあるコルビジェの作品は国立西洋美術館(本館)のみでしかも基本設計だけです。コルビジェの作品を日本でもっと多く見ているように感じるのは、その弟子である前川国雄氏、坂倉準三氏、吉阪隆正氏の作品を見ているからかもしりません。昔は近かったので良くお茶を飲みに入っていた坂倉氏の代表作でもある日仏学院など良い例です。そうそう国立西洋美術館は私と同い年です。
国立西洋美術館でも、彼の基本原則である「柱・スラブ・階段」という要素は確認できました。現在計画中の建物がラーメン構造ということも偶然ですが当てはまります。尤もさらに明確なのは写真のパリの「サボァ邸」です。閉じるところ、開けるところの感覚、外界と内界の境界と連続性、こんなことが今更ながら思い出します。
それともう一つの目的は特別展で開催していた「ヴェルヘルム・ハンマースホイ展」を見ることです。以前からこの静謐な画風を特徴とする北欧の画家が気になっていたので、NY、ロンドンと回ってやっと東京に来ました。個人的感想としては、「この人の絵は、見る人を遠ざけているような、まるで個人の家の中を覗くことは、その人の内面を見ているのだという気にさせる緊張感」を感じました。「弱い光の美しさ」は強い光にない、美しさがあります。
そういえば最近見た、「エミリー・ウングワレー展」での彼女の死の最後の数時間前という数枚の作品にはこの弱い光の美しさと混沌が描かれていたように感じました。弱い光こそ、熟成された光とでもいいましょうか?
美術館を出るとまだ12時前だったので、友達の奥様であるY夫人が美味しいと教えてくれていた、「韻松亭」に早足で向かいました。隣の精養軒には接待で連れてきてもらったことはあったのですが、ここは知りませんでした。すでに個室や小上がりは満席で天気が良かったのでテーブル席で食しました。3段重ねのお弁当です。自家製のゆばと豆腐が特に美味しかったです。
この工程で車の移動時間を入れて、2時間で戻ってくるのは、私が「24」を3倍速で見ている効能です。(笑)是非ご理解下さい!
ハンマースホイのパレットの写真が展示されていました。彼のよく使う色「灰色+青+茶+白」の痕跡が残されていました。ポスターは明るすぎますが、暗い北欧の空の色です。建物のコンクリートに合いそうです。
あれ程よくパリに行っていたのが、ここ数年遠ざかりました。
クラシックな美術館だけでなく現代アートを展示している「レンゾ」と「ロジャース」設計の「ポンピドー・センター」にも行きましたが、2009年には「ポンピドー・センター・メス」が日本人の建築家の坂茂氏とフランス人建築家集団により完成するそうです。フランス語がメキメキ上達している息子を通訳にして、来年はパリにでも行きたいものです。パリはやはりいつでも面白い街です。ヘミングウェイはパリに滞在し、その時に「パリに住む事が出来たならそれは幸運だ。何故ならパリは移動祝祭日だから」という名言を残しています。記憶に残る街とはそういう街です。
そうそうハンマースホイはパリやイタリアの街はほとんど描かなかったそうです。やはりカンパはカンパ、シマノはシマノか!?分かる気がします!?