BMWのディラーの前を通ってカタログ見ながら気にいったからとポンと車を買ったフランス文学者のように物に頓着しないなんてカッコのよい事は申しません。
この世の諸々の事につい心乱してしまう愚か者ゆえ、聖人君主の如き物質文明の批判などしないという前触れをしておきます。
私が靴に興味を持つようになったのは30歳の半ば位からです。もっとも、その頃は良い靴が欲しいとか、こんなブランドが良いと所有欲が強かった訳ではありません。もちろん当時に薄給では買える筈もなく、ただパラパラと本を眺めているだけでした。
或る人が私に「男性は靴を見れば分かる」というのです。まさかそんな事はないと、バカにしていたらあれよあれよとその通り推理が当たるのです。
仕事柄多くの人と当時は会っていました。初対面でその人を見抜けなければ失格です。もちろん、その人の職種、家族構成、居住地、言葉づかい、目線など色々な物事を総合的判断する訳です。
人事部にいた事が役に立ったのかもしれませんね(笑)
そんな中に、スーツを着込んで、控えめなもの言いと落ち着いた態度で面談した男性がいました。
ふと、彼の靴に目をやるとその靴は彼のスーツや言葉からは想像もできないような薄汚れたひどいものでした。
彼はその後会社のお金を持ち逃げして警察の御厄介になりました。
こんな事もありました。親戚が代議士と言う触れ込みで、意気揚々と新規事業を立ち上げると言っていたその男性はイタリア製の少し古臭いブランドスーツに、これまた相応しくないような、派手なブランド物のスリッポンを履いていました。
しばらくして、彼の会社は資金繰りに行き詰まり倒産しました。
この二つは偶然かも知れません。しかし、私がそう思ったように他人からも見られていると思うと靴と言うのはビジネスパーソンの一つの道具だと思うのです。あなたが他人の指図されないような実力者なら話は別ですが、他人との関わりが必要な多くの人には道具は人に見られるものです。
かくゆう私は30代の半ばより自家用車の通勤をしています(余儀なくされました)
今の車がトラックのように高い荷台の車(二匹の犬の運搬も可能な)なのですが、このアクセルとブレーキがトラックそのものなのです。つまりは地面から離れていて、ヒール&トゥで操作できないためコバのある靴では運転出来ないのです。(引っかかる)この車に乗る時は危険なのでドライビングシューズかスニーカーと相成る訳です。
よって事務所には最低2足の靴を用意して、必要に応じて履き替えている訳です。
特別な靴というのは良いもんです。こいつを履いてやるという意気込みが出ます。私の場合にはプレートゥの2足のJLを所有していますが、ここ一番という時にこの靴を履きます。背筋がピンとする感じがします。
少しカジュアルな洋服の場合にはオールデンです。今のようにコードパンが流行る前から大好きで、プレッピーなアイテムとも相性がよく、歳をとってからのアイビーも良いと思うこの頃です。
浜松まで買いに行った別注のスェードのオールデンはいまや手放せません。
それ以外にもグレンソン、EG、チィニー(チャーチ)などイギリスの靴が好きです。もちろんJM
ウィンストンも好きですが、凝ったデザイン性のコルテやイタリア製の靴はあまり持っていません。
そうそう、ジョージクルーニー主演の「マイレージライフ」という映画で、順番を待つのはアジア人の後ろが良いと、ひも靴を履かないお洒落じゃない人を揶揄する場面がありますが、あれはクルーニーの読みは正しいが中身はそんなに単純じゃないのです。
少なからずこの手の靴を履く人は二通りいて、ひとつは最初からクルーニーが揶揄したお洒落やダンディズムとは無縁の人、もう一つはうって変わって、とてもお洒落なのだけどどうしても移動する機会が多く、使い分けている人達です。この人たちは自宅には高級なひも靴がずらっと並んでいたりします。
こうしてみると靴という一つの物がその人を浮き上がらせてくると思いませんか。
少なくとも無頓着言い切れる人は実はその正反対なのではないでしょうか??
皆さんも今日どんな靴を履いているかチェックしてみて下さいね(笑)
もちろん靴好きならば写真の靴は何だかお分かりですよね、ダナーのチロリアンとレッドウィングです。80年代にバックドロップて購入したものとは違いますが・・・・