先般、新しいコルベットに試乗した。アメリカで乗ってみて普通に使えるコルベットの意外性に驚いたこともあり、新型が登場したら是非一度乗ってみたいと思っていたからだ。しかしながらこの顛末には幾らかの説明が必要となる。今、シボレーは多くのディーラーが扱っている。最大手はYという会社だろう。私もまずそのディーラーに試乗できないか尋ねてみた。するとどうだろう、少しも臆すことなく、この車は大人気で多くの顧客が試乗せず購入していると言う。試乗車などありませんと。これには驚いた。どんなに高額な車でも買う前に試乗できる。そういえばこの会社、スリーポインテッドのメーカーから一般のデイーラーに格下げされたことを思い出した。営業マンにこれ以上何を訴えても無駄と思い電話を切った。そして別のディーラーに電話をすると用意するという。これが普通だろうと思ったが、謝意を伝え当日このディーラーに向かった。
用意された車は今回のために用意したようだ。まだ30キロしか走っていない。それも高性能バージョンのz51だ。
ここでコルベットについて説明をさせていただく。私がコルベットを初めて見たのは第三世代のコルベットで場所は赤坂見附の交差点だった。真紅のコルベットが私の前を通り過ぎ渋谷方面に左折していった。私は振り返りながらこの車を見続けた。この世代のコルベットは1968年から82年とかなり長い間モデルチェンジをしなかった。車の横にはステイングレのロゴがあしらわれていた。それから現在のモデルが第七世代と4回のモデルチェンジを経てきた。
コルベットの素晴らしいところはまずそのサイズ感である。どんなに素晴らしい車でも全幅2メートルを超すものでは、日本の道は走りづらい。その点コルベットは全幅1.88 メートル、全長に至っては4.51メートルしかない。
シートに滑りこむとまず内装の作りこみがしっかりしている。ただ、旅客機のビジネスシートのような助手席との衝立はやりすぎかと思う。
エンジン始動する。始動するときは8気筒全てが一気に添加されるため、獰猛な唸り声を上げるが、走行モードは細分化され雪道等のウェザーモード、エコモード、ツアーモード、スボーツモードそしてトラックモードまである。トラックモードとはサーキットでの走行を想定している。ただし、インパネはカラー液晶でモードごとに変化するが少しカラーが多く、安っぽく感じた。
ハンドリングは秀逸である。下からの突き上げも皆無で素晴らしい。日産が得意とするステアバイワイヤのようでもある。
ブレーキはどうだろう。大口径化したブレンボの効きは良い。ただし、frの域内でということ。ポルシェのようなrrのリニアな制動とは違う。大きくて重いエンジンの慣性力はついてくる。
後方視界は意外と取りやすい。しかしながら前方は左右に張り出したフェンダーの突起が視界に入ってくる。背の低い人や女性には厳しいかもしれない。もっともムルシエラゴやディアブロに比べれば何ということはないのだけど。
最後にディーラーのひとも言っていたが荷物が積みにくい。リアの荷室が高い位置なのだ。面積はあるのだけど薄い。海外旅行のトランクは厳しいかもしれない。もっともトランクは別に送ってしまえばいいわけだけど。
総合的にみて素晴らしい車だと思う。前のモデルとは全くの別物に仕上がっている。
つまりは前の車の普通さも薄れている。何となくアメ車のゆとりというか、ダルな部分が無くなっているのだ。真っ暗な中でシルエットだけ見たらフェラーリと間違えるかもしれない。技術を磨き上げてスタイルを変えないポルシェ(特に911)と全て作り直してしまうコルベットとの方向性の違いかもしれない。もちろんどちらが良いというわけではないのだが。