少し湿り気を帯びた穴の壁面には無数の穴が開いている。穴のまた穴は呼吸をしている。
誰かがこの穴の先に不思議な光るものがあるといっていた。私にはそのものが見えないがきっとあるはずだ。私は体を縮めその光るものが「あるべき先」に近づいていみうとするが、荷物が邪魔をして思うように前進が出来ない。なんとか体をくねらせやっとのことでその「あるべき先」に近づく。そっと手を伸ばしてみる。
光るものは鶏頭のような形をしている。動物なのかそれとも植物なのか正体は分からない。少し湿り気がありゴツゴツもしている。
何故この真っ暗闇で光るという特徴を持たなければならなかったのか、生物に与えられた進化があるとすればどんな目的で光る事を与えられたのであろうか。
蛍は東西で光る周期が違うと言う。また蝶の一種にも同様な住み分けがなされていると聞いたことがあるが、必ずそうしたものには境界型が存在する。いうなればハイブリッドだ。私はそうした者たちに共感する。
進化は分化するしかし一定の時間を経て同化するこれも進化だ。この穴の形状は不思議だ。どこまでいっても終わりのない無限の闇など存在するのだろうか。それとも穴のまた穴を突き進むと全く次元の違う空間が現れるのであろうか。
世界は予定調和されているようで実に混沌としている。ある事実はある事実の裏付けなどではない。存在そのものが幻である。生物と無生物の違いとは何であろうか。生きているということは実在する事実なのか。それとて忘却の彼方に葬り去られる。
穴の外は天気が良いのだろうか、それとも大雨が森全体を覆っているのであろうか。でもこの穴はそんなことはお構いなしに存在する別の世界。手に取ったものが丸か四角かそんなことはもうどうでもいい。目が見えるからといって何故これが四角だとか丸だとか言い切れるのであろう。存在そのものが不確実な世界、混沌とした無音の世界・・・・・私は永遠に続く闇の世界の住人