ご主人の泰淳氏の「ひかりごけ」はだいぶ昔に読んだ事はありましたが、百合子さんのこの冨士日記を読んだのは、娘さんの武田花さんのこの写真集を購入してからでした。
このモノクロの写真集は丁度私が上京した頃の私の故郷を含めた、東武伊勢崎線付近の衰退していった地方都市を切り取ったもので、今はなき「新川球場」も載っていましたので私にはノスタルジックでもありました。
ところでお母さんの百合子さんの文章はなんというか、男より男っぽいというような、切り味の鋭いものです。
野上弥生子氏のものにも似た独特のものがありますが、彼女の表現はさらに男っぽさというか、斜めから見据えたようなニヒル感が漂います。そうかと思えばあっけらかんとして、全く拘りの無い純真さを見せたり、不思議な感性です。
この時代の女の人は現代の人にないような強さを感じます。その強さは我を張るというのではなく、人間の本質的な強さではないのかしらんと思えます。
昆虫や動物に対する冷めた目はそうした事を物語っているようです。
手に入れるには古本屋に足しげく通うしかなさそうです・・・・・・・・・・・