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2012年10月4日木曜日

セレンディピティ 伊藤穣一



昨日、NHKで伊藤穣一氏のロングインタビューが放映されていた。

私はブログを始めた時にこの本を読んだ。

御存じのように彼はいくつもの顔を持ち、現在MITのメディアラボ所長という肩書も持つ。

私は汐留の電通ホールで行われた講演会で直接聞いた事があるが、個人的には彼の著作を読むよりもこちらの方をお薦めする。

何故かと言われれば、微妙なニュアンスが伝わってくるからだ。

彼の妹はカリフォルニア在住の文化人類学者である。恥ずかしながら私は彼女のBENTOBLOGの愛読者である。

もともと研究者の父を持つ彼の家庭は日本とアメリカをいったりきたりしていた。さらに彼によれば人生最大の転機は父の恩師でもあるノーベル賞化学者の福井謙一氏の言葉だったという。

彼はきちんと決まり切った結論しか持たない大学の授業に辟易していた。そんな折、先生の言葉が心に響いたという。

世の中の不思議な動きはまさにカオスであり、彼はその研究を独学で行った。

彼のセレンディピティの始まりである。

誰でもこうした人生の転機を持つのだが、それに気づかずそのまま消えて行ってしまう事が多い。

彼は多様性を大切にする。日本的組織はその点に置いて弱い。均質な教育が均質な経験をつくり、組織は硬直化する。

彼は色々な経験をしてきた。IT企業の創立者、クラブDJ、NPO法人・・などなど・・それがどれも有機的に関連し合い、今に生きている。

入学したころに息子に留学について聞いた事があった。あの頃は留学しても時間の無駄とばかり効率性を優先し、外に出て行く事に消極的だった。何と今時の大学生気質と落胆したものだった。

あれから5年、今や明確な目的意識を持ち、チャンスあらば海外で経験をしたいと言っている。

まさに青天の霹靂!!かの環境のなせる業か。

「創発」と言う言葉も彼がよく使う。一人では考えられる事は限られるが、多くの多様性をもった人と交われれば、必然的にその解は多くなり、景色は広がる。

まさにセレンディピティとは人との出会いそのものである。

今日も一流会社を辞めて、コーヒーの販売会社を興したいという相談者が来る。楽しいではないか、まさにそこにこそセレンディピティが潜んでいるのかもしれないのだから。