武田百合子氏のこの2冊をつい最近読み返したばかりである。
上質なエッセーというものは、原稿用紙数百枚の表現よりわずか数行の言葉の羅列で、すぱっとその場を切り取って私達にありありとその光景を見せてくれるものなのだ。
そんなエッセーの中にこんなくだりがある。
愛犬が死んだ昭和42年7月の日記
「まだ小さかったポコは山荘へ向かうトランクの中で籠の蓋に首を挟まれ窒息死する。泰淳さんが穴を掘り、百合子さんが泣きながらポコを横たえる。そして百合子さんは「
早く土の中で腐っておしまい」というのである。
これほどまでに悲しい、そして真理をついた表現は見た事もない。
土に帰り、宇宙と一体になる。
死とはそういうものなのだと我々に気づかせてくれる。
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