このブログを検索

2010年7月29日木曜日

ポール・オースター Paul Auster  柴田元幸

ポール・オースターを初めて読んだのは「ニューヨーカー」に連載されていたものだった。

その後、なんとも言えない「ざらっ」とした感覚が気になり、「幻影の書」「トゥルー・ストーリー」「偶然の音楽」「ナショナルストーリー・プロジェクト」と読み漁った。

そして全ての訳が柴田元幸氏である。氏の翻訳は村上春樹氏の翻訳が小説家としての心中を断片にしているのとは対照的に、翻訳者として煮詰めて煮詰めて言葉を選びだし翻訳に徹した傑作といってよいだろう。

村上春樹氏が何故、グローバルなのかという問に対して、氏の翻訳はそれ自体他社との共感であり、翻訳を通じて世界中のあらゆる小説の要素を咀嚼して、そして吐き出していると結論付けられる。

ナショナルストーリー・プロジェクトはポールが全米から一般の人の色々な話を集めたものだ。

今日本でも進行しているらしい。

「偶然の音楽」に書かれているように、実は人生の大半は理由のつかない偶発的な出来事によって形成され、そしてその不可思議な中に、真の物語を掘り起こそうとしているものなのだ。彼の小説は虚構などと言う便利な言葉で片付けられないのだろう。

もし読んでないならどれでも構わない、ご一読をお勧めする。現代アメリカを代表する作家であることは紛れもない事実だ。

0 件のコメント: