赤い、大きな足をとりあげて殻をパチンと割ると、なかからいよいよ肉がでてくる。それは冷たいけれど白く豊満で、清淡なあぶらがとろりとのり、赤と白が霜降りの繊鋭な模様となって膚に刷かれてあり、肉をひとくち頬ばると甘い滋味が、冷たい海の果汁が、口いっぱいにひろがる。これを高級料亭のようにおちょぼ口でやってはいけない。食べたくて食べたくてムズムズしてくるのをジッと耐えながらどんぶり鉢に一本ずつ落していき、やがていっぱいになったところで、箸いっぱいにはさみ、アア、ウンといって大口あけて頬ばるのである。
この文章は「越前ガニ」が掲載された『サントリー・グルメ』第1号のものです。この文章を読んで越前蟹が食べたくない人は信じられません。よだれの出そうな文章です。馥郁たる蟹の旨さを妖艶なまでに表現しています。
ところでこの蟹の舞台は越前町にある「こばぜ旅館」です。いつか行きたいと思っているのですが、実は偶然、岐阜に赴任していた頃、妻と義父は車で琵琶湖を北上し、この岬のこの場所に蟹を買いに出かけたことがあるようです。その帰りにお土産で買ってきてもらった蟹の美味しいことといったら筆舌に尽くしがたい味でした。Sパパのお友達の弁護士先生が金沢から3万円を払って送ってもらう蟹の美味しさを話していましたが、私も全く同感です。
メスのセコガニの漁期は1月中旬までです。岐阜では当時、100円もしませんでした。
ちなみに開高丼なるこの旅館の名物は蟹半分を使った丼物5000円だそうです。もちろん食べたいー!!!!!
写真は旅館のHPよりお借りしました。
くいしんぼうにかけては開高氏にもひけをとりませんので・・・・・・・・・
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