昭和、平成にまたがる大女優の死は色々なテレビ局で特番を組まれ放送されている。
考えてみると彼女の活躍していた時代はテレビがテレビとして輝いていた時代だったのかもしれない。
1970年から我々は多くの物を手にしていった。高度経済成長と言う魔法によって今まで手にすることすら難しかったものが簡単に手に入れられるようになってきた。
一方では物事を深く考えるという律儀な国民性はどんどん薄められていった。手軽で愉快で楽しいものが茶の間の中心になっていった。
そんな大きなうねりの真ん中に彼女は存在した。
多くの大女優が眉をしかめるような役柄でも不毛な下積み時代を思うと断れなかったと聞く。
それが彼女を国民的スターダムに押し上げた。
人間には二通りの人間がいる。自分が苦労したの同じように後輩にも経験させ育てようとするタイプと自分が受けた苦労は出来る限り後輩にはさせずに安心させ伸ばしてやろうとするタイプである。
彼女が後者である事は疑いない。
彼女のような女優はこれからは多くないだろう。何分、与えられる事が前提で生きてきた人間には彼女の優しさと強さが分からないからだ。
人は自分の経験でしか分からないものなのだから。
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