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2013年1月24日木曜日

PM 6:50



 美佐子の息子は浩一郎の息子の勧めもあって塾に通い始めた。もともと成績は悪くなかったので試しにテストを受けさせてみたらかなりの高得点をとりそのまま特待生となった。特待生は授業料が掛らない。美佐子にとってはありがたかった。

 それと同時に息子へのいじめは影を潜めた。一緒の塾に通うTやHが息子をかばうようになったのだ。庇うようになったといより、むしろ今までいじめていた方といじめられていた立場は逆転した。
 息子は大きいお兄ちゃんとの約束を守っていた。「もし友達が出来て、相手より優位な立場になったとしても、仕返しをしてはならない。そうすることがいじめには一番良くないことだから。それをいじめの連鎖という。君はいじめている子になってはいけないから。そう、いじめの連鎖は断ち切らなくてはならない」

 息子の顔が前より柔和になった。そして何より勉強という集中できるものがあることで、精神的に一回り大きくなったような気がした。今までは読まなかった新聞も目を通すようになった。
 どうして難しい漢字が読めるようになったのか不思議な思いで見ていると、分からない漢字を辞書で一生懸命に調べていた。分からない事はそのままにしない。自分で調べるといった事を実践しているようだった。浩一郎の息子から貰った辞書の一番最後のページに息子の名前が書いてあった。そしてその横に「君なら出来る」と書かれていた。美佐子嬉しくて目頭が熱くなった。





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