パンチョ・ウラヌスという風変わりな山守人がいた。
彼の日課は毎朝、トラパニ山の麓にある泉に出かけ動物たちと話をすることだった。
ある朝パンチョがその泉に行くと、岩陰に黒い小さな首の長い動物がこちらを見ていた。
彼はその動物に優しく心の声で「ここの泉は綺麗で飲んでも心配はないよ。たっぷりお飲み」と伝えた。
するとその動物は水を飲み始めるやいなや、あれよあれよと言う間に緑色から金色になり、体はパンチョを見下ろす大きさに変身した。
その動物は竜の子だったのだ。
竜の子は駱駝が人を乗せるようにその長い首をゆっくり地面に近づけ、パンチョに乗るように促した。
竜はパンチョを乗せるとゆっくりとゆっくりと白鳥が池から飛び立つときのように大きな翼をはばたかせ大空に舞い上がった。
竜は上昇気流をうまくつかまえるとまたたく間に山の頂のはるか上空まで達した。
雲の隙間から山をのぞくと、今まで緑色の水面を覗かせていた火口付近が白い煙を吐いていた。
しばらくするとその火口からポンポンという音とともに岩石が噴出してきた。
パンチョは「山が火を噴くから早くみんなに伝えなきゃ」と竜にいい、山麓まで滑空した。
動物たちはパンチョから火の山の話を聞き、早々と身支度をして山から離れていった。
数日後、火山の大爆発が起きて森もパンチョの山小屋も焼き尽くした。
パンチョや動物は非難したので命を取り留めたが、山麓の街の人はパンチョの話を信じようとせずその街の住民は誰一人生き残らなかった。
真っ黒になった山に戻りパンチョは泉だけが残っていることに気づいた。
パンチョがその泉の水を山肌にかけると不思議なことに岩の割れ目から芽が出て、みるみるうちに緑の絨毯になっていった。
山を離れていた動物たちも戻り始め、元の平和な日々に戻っていった。
パンチョを乗せた竜は山がまた怒り出さないように火口で山の怒りを鎮めていた。
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