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2011年9月20日火曜日
理知的な蟹
理知的な蟹がいる。
どんなに大きな波が来てもその場所だけは脅かされない場所だとその蟹は知っている。
何故蟹がその場所を知り得たのか、何故その場所を探し当てたのか、不思議だ。
そもそも蟹は考えているのだろうか。蟹の思考回路があるとすればどうなっているのか。
人間は真っすぐにその対象を目で確認し、脚を前に運ぶ。この動作とて蟹は違う。
目を真横に睨みかえて、斜に構えた体を目的物に向けて運ぶ。それは決して真正面に歩くことが出来ないからだ。真正面の風は進まない。左右のどちらかにすこしでもずれていないと前に進めないヨットの原理のようだ。
思考などなくここを探し当てたのならば本能の為せる技かとさらに驚く。
台風のうねりはますます大きくなり、波消しブロックに容赦なく襲いかかる。
砕け散った波は白い泡となって岸壁にへばりつく。
波を見ているとどの波も全く同じではない事が分かる。とても似ている波はある。しかし、全く同じではない。ほんの些細にも異なっているのだ。砂粒ひとつでも。
はるか数千キロ離れた南の島の鼓動が伝わってくる。それは地球が生き物である証左でもある。
2羽の鴎が水平線近くを飛んでいる。太陽は波面を照らし、アイスクリームをスプーンですくった後のようにキラキラと輝いている。
波がせり上がると今まで暗緑色の水がすぅーと色が抜けるようにライトグリーンから透明になって遠く江の島がぼんやり透けて見える。
また大きな波がやってきた。
さすがに今回は蟹のいるところにも少しだけ水がかかった。
「あっ!!落ちた」
蟹は何の前触れもなく、その神々しいまでの場所をあっさり放棄したのだ。
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