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2010年3月3日水曜日

日米安全保障条約  経済摩擦

Sパパが「村田良平回顧録 上下巻 ミネルヴァ書房」を読んで「日米安保とはそうだったのか」と膝を打ったと申しておりました。アメリカという国とどっぷり相撲を取ってきたSパパならではの所感です。
早速、購入して昨日一読しました。上下巻であり、幼年期から三高、京大、外務省へ入省したての頃までは自分史的な内容でありますが、その後外務官僚として政治の中枢に仕えながら、徐々に心境変化して行った様子は大変興味深いものです。

村田氏は日米同盟は本来敗戦によって押し付けられた屈辱的な条約であり、現在の日米関係は「良識を超えた特殊関係」であると言っています。日本は独立国としての自尊心を譲るべきでなく、「私は憲法改正を実現し、その上で全基地を対象として米国と再交渉し、二十一世紀にふさわしい新しい安全保障条約と、これに内容的にふさわしい地位協定を締結し直すべきであると思っている」と言って、思いやり予算などには真っ向から反対の意向を表明しています。


彼は当初からこれほどまでの反米意識を持っていたのでしょうか?私にはそうは思えません。
この回想録の一文「しかし私のかかる日米安保体制との間の心理的葛藤は、当初は大きいものでなかった」「全世界的な情勢を見れば、現在でも日米間の利害は一致している部分が殆んどである」とも言っています。
では何が彼をそこまで反米的にさせたのか?それは冷戦終結前後の日米経済摩擦ではないのでしょうか。冷戦の終結はいうなればパラダイムの変化だった訳です。さらにそのパラダイムの変化と同時に日本の経済力が高まり、アメリカに影響を及ぼすようになったとたんパタンと裏返ったのです。立ち位置が変化すれば物の見方も変わります。パラダイムシフトにより必要なくなってしまったということなのです。

彼が駐米大使の時代は出世街道を上り詰めてきた村田氏にとって、唯一の憂鬱な時期だったとも思われます。そんなことも彼の論調に出ています。

一部の論客の中にはあのような経済摩擦はもうないだろうという人もいます。

そうでしょうか、牛肉の問題のようにマスとして対抗するやり方ではありませんが、今度は個別に無理難題を突き付けてきます。今のトヨタ問題が良い例です。

いずれにせよ、戦前の政治や外交の表舞台を踏んだ稀有な回顧録で、大いに参考にせねばなりません。

韓国やドイツに簡単に大規模プロジェクトを取られているどこかの国の政治家は、経済と政治について、いやその関わりについて勉強せねばなりません。

最低でもあと数回読み返す必要のある本だと思います。

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