この本の著者こと岩田規久男先生の授業を受けたことがあります。まだ助教授だったころです。
その頃の母校にはレッドパージを逃れて大量の優秀な教授陣が東大より移り住んでいたのか、はたまた生え抜きの先生との軋轢があったのか定かではありませんが、優秀な先生が多かったと記憶しています。
岩田先生は小宮隆太郎氏の弟子でもあり、その後師が日銀との間で起こしたインフレーション論争の延長ともとれる、日銀との「マネーサプライ論争」を始めるのです。
簡単に説明すれば岩田氏の主張はこうです。
ハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライ
左辺から右辺の因果関係があり、かつ信用乗数は比較的安定しているから、日銀がハイパワードマネーを増やせばマネーサプライは増える。
一方日銀は所要準備の後積みを行っているという理論から、ハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライという公式において信用乗数には乗数の意味はなく、マネーサプライとハイパワードマネーとの事後的な比率に過ぎないとしたものでした。
結果はこの乗数が低下し続けたことで先の主張は崩れた訳です。
先生は今は母校を離れて学習院大学で教鞭を振るっているようです。
そんな背景を思い出しながらの1冊でした。
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