夏のプラタナスが、手いっぱいにひろげて
カルチェの散歩道を飾る頃には、
パリにいて
取り残された思いの若者は、
旅先の娘から、優しい手紙を受け取っている。
あれはまだ
リュクサンブール公園の木々が
灰色の空に黒々とこごえている頃だったが、
ローヌ川の谷を南へ、リオン湾まで
オリーブが実り、糸杉が緑の焔を上げる土地へ旅するのだと、
娘が、頬を染めて話したのだった。
春の嵐に誓った旅の途上に、今む、娘はいて、
南仏の日なた臭い便りに、思いを託している。
出払って人気のないパリの学生下宿の
夏のプラタナスがそよぐ窓辺で、
若者はカマルグの湿地に水しぶきを上げながら、
白馬に乗って日が暮れる娘のことを考えている。
夕映えの空には、熱い思いのフラミンゴの群れも
舞っているのてゼはないかと・・・・・・・・・
(1979.7.20 JET STREAMより)
プラタナスの葉もすっかり落ちて
白夜のような薄暗い朝を
子供の手をとり、送り届ける親たちの姿に変わった
頃ごろでも
夏のプラタナスを思い出す
パリの冬です・・・・・
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