年初にこの「流動性の罠」を危惧していましたが、ニュースで「日銀は、デフレなどに対応するため、追加の金融緩和策の検討に入った。昨年12月に導入した10兆円規模の資金供給の拡充を軸に、16~17日に開催する金融政策決定会合で議論する」とありました。
流動性の罠(りゅうどうせいのわな、liquidity trap)とは、金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うことをいいます。
景気後退に際して、金融緩和を行うと利子率が低下することで民間投資や消費が増加します。しかし投資の利子率弾力性が低下すると金融緩和の効果が低下します。利子率を下げ続け、一定水準以下になると、流動性の罠が発生するというものです。 利子率は0以下にならないため、この時点ではすでに通常の金融緩和は限界に達し、民間投資を喚起することもできなくなるためです。金利が著しく低いため、債券の代わりに貨幣で保有することのコストがゼロとなり、債券と貨幣の間に選好のトレードオフが発生せず、投機的動機に基づく貨幣需要が貨幣供給に応じて無限に増大するともあります。 マネーサプライをいくら増やしても、民間投資や消費に火がつかないため、通常の金融政策は効力を喪失する。反面、クラウディングアウトの効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となるものです。
1990年代末ごろ日本において流動性の罠が発生しました。ゼロ金利政策により利子率は歴史上最低となりました。この中でも民間投資は思うように回復せず、通常の金融政策は効力を喪失したのです。
私には同じことが繰り返されるのでは心配しています。日銀はあのときの金融政策がデフレに追いつけず実質金利を高止まりさせたとの政策に批判に陥らないために今回いち早くポーズをとったのかも知れませんが、政治はあのときと同じように全くコミットメントを欠いています。
あのときは2003年9月から急速に進んだドル安に際して、2004年初頭に大規模なドル買い為替介入が行われ、この過程で大量の円が供給されることになり、外国為替市場を経由した資金供給という経路をたどり、結果として物価安定に一定の効果を発揮しましたが、今回は事情が違います。
民間投資成長の構造変化は続いています。暫くはこのデフレという魔物を注視する必要があります。
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